【潜在表明】

痛いポエム

大好きな金木犀の香りは今年も消え去った。
命中率95%のこごえるかぜは、確実に僕の肌を蝕む。
ポケットの奥に逃げ込んだ両の手はしばらく出てきてくれる気配もない。

さて、負け惜しみを述べねばならない。
眩しい街並みに。華やかな恋人たちに。孤独を振りかざす自分に。
来たる12月25日。今年も共に過ごす者は誰一人としていないようだ。

昔から暗く狭いのが好きだった。
わざとらしくきらめく世界は僕にとって明るすぎるから。いや、もしかすると世界にとって僕が暗すぎるだけかもしれない。だからせめて、この日だけは華やぐネオンに1人照らされたいのだ。
地下鉄の窓に急に映る顔がじっとこっちを見る。
嫌いな僕の劣等感。他人と違う優越感。地上へ出ると煩いくらいの散光が僕を責めた。
ライトにあぶり出される僕の孤独のカタチは後ずさりするように影になる。
でも、そうしてできた影が示す方角はいつも一つだけ。陽の光なら半分は照らしてくれるのに。
偽りの光。欺瞞の歌。虚勢の街。
どれだけ明るくて、どれだけ眩しくて、どれだけ騒がしくて。それでも世界はモノクロだ。

僕はどうしたいのか、本音は行方不明だ。
はしゃぐ恋人たちはトナカイのツノなんかを生やせるらしいが、私だって猫耳程度なら生やせる。
本音のあてがあるなら両手が逃げ込んだポケットの中だろう。
「寂しい」を認めるのが怖くて、「孤高」というラベルを貼って誤魔化しているだけ。
そう言われれば返す言葉はない。
それでも。
愛や恋、それもいい。
でも、今はまだこの痛々しい自分を、独りよがりな夜を抱きしめていたいのだ。

どこかに向かう途中じゃない。
今日の僕は前日談じゃない。
遠くにある理想よりもたった今に敏感でありたい。

そうしていればいつか、片方の手だけはポケットに入れなくてよい冬が来るかもしれない。

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