はじめに
タイトルを見て「嫌な奴だな」と思っただろう。安心してほしい。主も書きながら思っている。
だが事実なので仕方ない。
レポートに追われ、就活に追われ、「AIでなんとかならないか」と一度でも思ったことのあるあなた。なんとかなります。正しく使えばね。
世の中の多くの人は、AIを「ちょっと賢い検索エンジン」として使っている。
なんともったいない。フェラーリでコンビニに行くようなものだ。
この記事では、主が有料課金までして磨き上げたAI活用術の基本を、何も知らない中学生でも分かるレベルまで噛み砕いて伝授する。誰にも頼まれていないが、伝授する。
大前提:AIは「察してくれない」
先にこれだけ覚えて帰ってほしい。
AIは、文字を記号としてしか読めない。
AIにとって言葉はただの記号だ。あなたの感情も、事情も、行間も、一切読み取れない。「いい感じにして」が通じない。「空気読んで」が通じない。世界で一番察しない存在、それがAIである。人間だったら3日で友達をなくしている。
だが逆に言えば、言葉にしたことは全部伝わる。人間なら面倒くさがられる長さの説明も、AIは嫌な顔ひとつせず読む。顔がないので。
その1:AIは、一途に使え
「ChatGPTとGeminiとClaude、結局どれがいいの?」
よく聞かれる。答えはこうだ。
どれでもいい。大差ない。
各社のAIは殴り合いの開発競争の末、どれも十分すぎるほど賢くなった。細かい違いはあるが、我々一般人の用途では誤差だ。「硬め濃いめ多め」か「ぜんぶ普通」かぐらいの、好みの問題である。
それより百倍重要なのは、ひとつのAIを使い込むこと。
AIは、使えば使うほどあなたとのやり取りを蓄積していく。あちこちのAIを浅くつまみ食いするのは、毎回初対面の相手に自己紹介からやり直すようなものだ。乗り換えるたびに、育てた文脈がゼロになる。
ちなみに主はClaudeの有料プランを使っている。布教ではない。ただ一途に使い込んだ結果、もう他のAIでは満足できない身体になっただけだ。そろそろ名前をつけようか悩んでいる。
その2:指示の出し方(プロンプト)
AIへの指示文のことを「プロンプト」と呼ぶ。ここが上手いか下手かで、返ってくる答えの質は天と地ほど変わる。
コツは4つ。
① 役割を与える
最初に「あなたは〇〇のプロです」と宣言する。これだけで回答の精度が跳ね上がる。
AIは巨大な知識の海から答えを引っ張ってくる。役割を与えると、その海の「プロの領域」だけに探索を絞ってくれる。要するに、話しかける相手を指定しているのだ。
- 悪い例:「レポートの書き方教えて」
- 良い例:「あなたは大学のレポート指導のプロです。社会学のレポートの構成案を提示してください」
② 動詞を明確にする
「〜して」という漠然とした指示をやめる。
「~について考察」「~を要約」「~を箇条書きで出力」「~に関して3案提示」。
AIは察しないので、「いい感じにして」と言えば「いい感じ」を勝手に想像する。そしてその想像は、大体外れる。何をしてほしいのか、明確な動詞で指定する。
③ 材料(ソース)を渡す
AIはあなたの授業に出席していない。当たり前だが、みんな忘れる。
レポートなら、課題文と講義資料を毎回貼り付ける。就活なら、各会社のホームページ内容や企業理念、過去の通ったESの例などをインプット。AIの回答の質は、渡した材料の質で決まる。 材料を渡さずに良い答えを求めるのは、具材を渡さずに「うまい味噌汁を作れ」と言っているのと同じだ。
④ 事実と意見を分けさせ、不明点は先に聞かせる
主が毎回使っている呪文をふたつ授ける。
- 「事実と、あなたの推測・意見は分けて出力して」
- 「不明瞭な点や根拠が曖昧な点があれば、出力する前に質問して」
AIには、知らないことも「それっぽく」答えてしまう習性がある(詳しくは後述)。だから先回りして「分からないなら先に言え」と命じておく。これだけで信頼度が段違いになる。
その3:プロジェクト(部屋)を分ける
多くのAIには「プロジェクト」という機能がある。ざっくり言えば、話題ごとの専用チャットルームだ。
主はこう分けている。
- 就活の部屋
- レポートの部屋
- 趣味の部屋
- etc…
こうしておくと、AIは各部屋の文脈だけを覚え、その分野に精通した専属アシスタントに育っていく。過去のやり取りの記憶から、必要なものだけを引き出してくれるようになるからだ。「この前のあのエピソード、ESの形式で出力して」が通じる相手になる。
人間関係と同じである。ゼミの教授に恋愛相談はしないし、恋愛相談の相手に単位の話はしない。部屋を分けるとはそういうことだ。
その4:信頼できるソースを大量に食わせる
ここが主の活用術の核心だ。AIは過去のデータしか知らない。
ならば話は簡単で、こちらから信頼できるデータを食わせればいい。
主のやり方はこうだ。
- 日々のメモや思考は、全部Obsidian(高機能メモアプリ)に書く
- それをClaudeと同期させる
- 論文・書籍・教科書はPDF化して読み込ませる
すると何が起きるか。AIが「ネットのどこかにある一般論」ではなく、「主の手元にある一次情報」に基づいて答え始める。
学生なら、こうだ。
- シラバスと講義スライドを読み込ませる → その授業専門の家庭教師が誕生する
- 企業の採用情報と自己分析メモを読み込ませる → その企業専門の就活エージェントが誕生する
AIは鏡だ。ゴミを入れればゴミが出てくる。鶴を入れれば鶴が出てくる。
掃き溜めに鶴。このブログのタイトル、回収しておいた。
実践:明日から使えるコピペ用テンプレ
理屈はもういい、という人のために、そのまま使えるテンプレを置いておく。
レポート編
あなたは大学のレポート指導に関して数十年の経験と実績をもつ専門家である。 以下の課題文と講義資料をもとに、レポートの構成案を3つ考案。 事実とあなたの推測は分けて出力し、不明点があれば出力前に明確に提示。
【課題文】(ここに貼る) 【講義資料】(これまでのすべての資料を添付) 【条件】〇〇字、序論・本論・結論の形式、文末は常態に統一
ちなみにだが、書き方の条件に関して、立教生は『Master of Writing』をダウンロードした上で、「書き方は添付したmaster of writingを厳守すること」とプロンプトに加えるだけでまともな論文になる。
就活編
あなたは大手企業の人事に長年勤める就活の専門家である。 以下の私のエピソードをもとに、面接官として深掘り質問を5つ提示。 私が回答するたびに、人事の視点から改善点を指摘。
【エピソード】(ここに貼る) 【志望企業・職種】(ここに貼る)【資料】(興味のある会社のホームページから必要な情報をすべて添付)
役割。明確な動詞。材料。事実と推測の分離。
ここまで読んだあなたなら、このテンプレに全部盛り込まれていることに気づくはずだ。
注意:AIは息を吐くように嘘をつく
最後に、最大の弱点を伝えておく。
AIは、知らないことを聞かれると、堂々と嘘をつく。
「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる現象だ。AIは「正しい答え」を探しているのではなく、「それっぽい言葉の続き」を計算している。だから、存在しない論文、存在しない事件、存在しない参考文献を、自信満々の顔で生成することがある。顔はないが。
ルールはふたつ。
ひとつ。固有名詞・数字・引用は、必ず自分で確認する。 AIが挙げた参考文献をそのままレポートに載せて、それが実在しなかった場合を想像してほしい。単位が消える音がする。
ふたつ。最終稿は自分の言葉で書く。 AIの文章には独特の「AIっぽさ」があり、読む側は意外と気づく。それに、下書きを自分の言葉に直す工程こそが、あなたの文章力になる。AIは下書きと壁打ちの相手。ハンコを押すのは、あなたの仕事だ。
おわりに:「AIをうまく使う」とは何か
ここまで読んで、気づいた人もいるだろう。
役割を伝える。曖昧な指示をやめる。材料を渡す。分からないことは先に聞いてもらう。相談する部屋を分ける。
これら全部「人にものを頼むときの作法」である。
つまり「AIをうまく使う力」の正体は、最新テクノロジーの知識ではない。自分の頭の中を、全部言葉にして相手に渡す力だ。察してもらうことを最初から諦める力、と言ってもいい。
主のAIの使い方がうますぎる理由は、おそらくこれだ。普段から人に察してもらえた試しがないので、全部言葉にする訓練だけは積んでいた。長年の欠点のもとに、時代の方から特技になりに来た。
ただし、ここに書いたことなぞ初歩中の初歩。より踏み込んだ使い方だってできる。
日々進化しているAIを使いこなすためには、使う我々が進化し続ければならないのだ。

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